減衰力で学ぶロール剛性配分と操舵特性


さて、バネによる操舵特性が分かったところで、次はせっかく減衰力調整機能が付いている車高調なので、減衰力をいじって好きなセッティングを出してみようと、色々テストしてみました。
まずバネレートとハンドリング特性その1に書いた通り、車高調を入れた事によりフロントに荷重が乗りにくくなったために、コーナーの入り口でアンダーステア方向で向きが変わってくれません。
これにより、これから運転方法をどうするかを考えてみました。

さて、これから書く事は非常に重要で、きっと役に立つと思います。
バネレートとハンドリング特性その1に、「書籍や一般に言われている前後のロール剛性配分と、アンダー ステア、オーバーステア方向のセッティングの話は理論として一理あるが、実際にはそう単純にならない」、と書きましたね。
実際に私も入り口で姿勢を変えるために、理論に従ってフロントの減衰力を下げてみましたが、コーナー全体を通してみると、今一アンダーステア方向で、中々イメージ通りのハンドリングにはなってくれませんでした。

バネレートとハンドリング特性その1に書いた、ロール剛性配分による、アンダーステア、オーバーステアの方向性の話は理論的には正しい のですが、この 理論のモデルは色々な物を無視して現実には存在しない、シンプルな車のモデルとしています。
まあ詳しくはまたトップページのサスペンション編にでも書く予定ですが、ざっと言うと、このモデルはロール軸は水平である事が前提だし、ボディーがねじれたりしない事が前提だし、ストロークしてもアライメントが変化しない事が前提です。
しかし現実の世界では、この全てが起きますね。
更にカタログには載っていない主要諸元に書いた通り、S2000はロール軸が前下がりです。

よって一般に言われている理論通りにはならない訳です。
これらのロール軸やアライメント変化を考慮した、実際にはどうなるのかの詳しい理論はまたどこかに書くとして、ここには結論だけ書きましょう。
セッティングの参考にして下さい。
まずコーナーを4つの区間に分けて考えてみます。

1、 制動区間
2、 ターンイン区間
3、 旋回区間
4、 加速区間

と言った具合です。

ちょっと図を書いてみましょうか。

図1 コーナーの区間分け

まず、1の制動区間ですが、これは今までにさんざん書いた通り、フロントの荷重が大きい方が短い距離で止まります。
よって、減衰力は柔らかい方が止まりますね。
制動に関しては、リアも伸び側の減衰力がフロントの荷重に影響を与えるので、リアの減衰力(伸び側)も低い方が止まる事になります。
まあ、これは簡単ですね。

次に2のターンイン区間です。 ここは、基本的にブレーキからは足を離してハンドルを切って、車体にヨーを作る区間ですね。
アクセルはまだ踏んでいません。
私が車高調を入れて一番曲がらないと感じたのはここでした。
ここは、フロントの減衰力を下げた方が向きは変わりやすくなります。 この区間は一般に言われている理論通りですね。
まあ、フロントタイヤに荷重が大きく乗りますから、感覚的にもそうなりそうですね。
逆に減衰力を硬くすると、殆ど向きは変わらなくなります。

次に3の旋回区間ですね。 ここはアクセルはオンで、アクセルコントロールをする区間です。 いわゆるコーナリング区間ですね。
さて、ここで本に書いてある、一般に言われている理論から外れます。
理論ではフロントのロール剛性配分を小さく、つまりフロントの減衰力を柔らかくするとオーバーステア方向になるはずですが、実際にはそうはなりません。
結構ここでハマっている人がいますね。

ここは逆に、フロントの減衰力を固くした方が遥かに曲がります。
アクセルオンでは、つまり加速中は、フロントのロール剛性配分が大きい方が曲がるという事です。
これは理論とは逆ですね。
もしも、アクセルオンでアンダーだと感じる人は、思い切ってフロントを固くしてみてください。
減衰力を変えるのが一番簡単ですが、バネレートを上げたり、前に補強を入れたり、タイヤの空気圧を少し上げたりしても同じ効果が得られます。
とにかくフロントのロールが減る方向の事をすれば良いわけです。
逆に、後ろのロール剛性配分を下げるというのも同じ効果が得られます。が、多くの場合ロール剛性を下げると、車全体の限界が下がるので、後ろのロール剛性を下げるよりも、前を上げてみると良いでしょう。
フロントの減衰力調整ダイヤルをチョロット固くしたら、いきなり回頭性が良くなった、なんて事は良くある話です。

最後に4の加速区間です。 ここは、ほぼアクセル全開ですね。
ここも加速状態なので、3と基本的に同じです。
フロントを固くすると良く曲がるので、早く加速体制に入れます。
ただ曲がるという事は、オーバーステア方向になるので、トラクションには注意が必要です。
ここでリアが滑り過ぎたり、スピンの恐怖感が有る人は、フロントの減衰力を逆に下げれば、フロントが先にドリフトアウトしてFF車の様に弱アンダーで立ち上がります。 これも理論と逆ですね。


さて、これらを一気にまとめると、減速状態では、フロントのロール剛性が低い方が曲がり、加速状態では、フロントのロール剛性が高い方が曲がるという、とっても簡単な結果となります。
勿論、やり過ぎは駄目です。 タイヤのグリップ力を考えて、荷重が移動できる常識の範囲内で、固くしてくださいね。

ちょっとコーナリングイメージの図を書いてみます。
まず、純正の様なフロントのロール剛性が柔らかいセッティングの走行ラインです。

図2 ノーマルサスペンションの走行イメージ

純正足では、実際に私はこのような運転をしていました。 ブレーキは良く止まるし、ターンインで向きも良く変わります。
しかし、アクセルを踏めるポイントは大分コーナーの後半、車の向きが変わって直線的に立ち上がれる場所からですね。

次に、車高調でフロントのロール剛性配分を固くしたセッティングの走行ラインです。

図2 フロントのロール剛性配分を固くしたセッティングの、車高調での走行イメージ

図の様にブレーキポイントは手前となりますし、ターンインであまり向きが変わりませんが、アクセルを踏んでもグリグリっと曲がるので、加速体制に入れるポイントが遥かに手前になります。
旋回中の姿勢変更も、アクセルで簡単にできます。


さて、 今回はS2000の話でしたが、殆どのFR車はこの傾向で間違いありません。
また私の知るFF車もこの傾向でした。
ただし今回の話は、あくまでタイヤをグリップさせて(滑らせないで)、走るという事が前提です。
FR車では滑らせても基本的に同じ傾向になりますが、FF車では運転の仕方によっては、逆にフロントを柔らかくした方が、入口から出口まで綺麗にアンダーを出さずに滑らせて抜けて行ける場合があります。 まあ、FFの話はここではカットしますね。

ちなみに私の好みのセッティングは、図2の様なフロントのロール剛性配分をリヤよりも高くするセッティングです。
まあ、取り敢えずはフロントの減衰力を固くするだけですね。
その理由は、このセッティングはターンインでは確実にアンダーステア方向になりますが、それは運転技術で何とかなります。
しかし、旋回区間でのアンダーステアの特性は、運転していてあまり気持ち良くないからです。
特に、長く回り込んだ高速コーナーの途中でアクセルを戻したり、ハンドルを切り足したりして姿勢を作り直すのが、運転としてあまり美しくないと考えているからです。
やはり、せっかく後輪駆動車に乗っているからには、コーナリング中にアクセルで自由自在に車の向きを変えられるようなセッティングの方が、良いと考えています。

私はS2000だけでなくレーシングカーなどでも、長く続く高速コーナーが、一番ドライバーの技術よりも車のセッティングや性能の差が出る部分だと思っています。
よって、車のセッティングはドライバーの技術ではどうにもならない、そこの部分に合わせるのが良いと考えています。
ちなみにS2000は、その旋回区間が激烈に速いです。 よって、その長所は殺したくないですねぇ。

と、いう訳で私は、ターンインよりも旋回区間、つまりコーナリング区間での操舵性を優先したセッティングにしています。
ただこのセッティングは、加速中に雑にアクセルを踏むとオーバーステア方向になりやすく、スピンしやすくなるので、初心者はくれぐれも注意してください。
始めはフロントを柔ら目にして弱アンダーとし、少しずつ固くして行くのが良いでしょう。

そしてある所までフロントを固くして、リアの限界の低さを感じてきたら、次にリアを固くしてやればまた今度はアンダーステア方向に行きます。 そしたらフロントをまた少しずつ固くして、と言った具合にセッティングして行くと、気づいたら、とんでもなく限界が高い車になっていたりします(笑)。
勿論、やり過ぎは駄目です。 タイヤのグリップや路面追従性を考えて、ステージによって最適な減衰力を見つけるのが良いでしょう。

良く、ショップや雑誌の記事などで、 ハンドリング特性、特にアンダーステア方向に持って行きたいとか、オーバーステア方向に持って行きたいというと、すぐに車高の前後バランスを変えたり、タイヤのサイズを変えたり、アライメントを変えたり(特にキャンバーを付ける)という話になりがちですが、ロール剛性配分を変えるというのも非常に効果的です。
OHLINSの車高調だと、減衰力のワンクリックだけでビックリするくらい変わります。


とりあえず今回は、減衰力の変更によるロール剛性配分と操舵特性の話なので、この辺で。

ところで、、、えっと突然ですが、このS2000のページ、面白いですか??(笑)
そこそこ手間掛けて書いているので、アンケートを頂けると励みになります。(頂いた方々、有難うございました)
是非多くの方々のご感想などを頂けると嬉しいです!!(笑)
 

続く…。

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